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定額給付金による法治国家の崩壊


衆院予算委員会で、民主党の仙谷由人衆議院議員は、定額給付金事業の法的根拠が非常に曖昧であることを指摘し、「模範六法」を手に持ちながら「法なき国家、法なき行政執行の国家になる」と厳しく指摘しました。私は国会中継を録画で見て、本当にうなずくことばかりでした。

仙谷議員は、地方財政法第10条の「地方公共団体が法令に基づいて実施しなければならない事務であって、国と地方公共団体相互の利害に関係がある事務のうち、その円滑な運営を期するためには、(略)国がその経費の全部又は一部を負担する。」としており、この条文に違反している可能性があると指摘しました。

簡単に言えば、地方自治法による、地方自治体の行う事務(事業)には大別して、法定受託事務と自治事務の2種類あるのですが、法定受託事務は法律が必要です。自治事務は、自治体が条例で定めたりして独自に行う事務(法定受託事務以外の事務)です。自治体が独自に行う事務であれば、国が定める必要性はないのですが、法定受託事務は国が法律で定めて地方自治体に委託する事業ですから、もちろん国が費用を負担することになります。

この定額給付金事業が、経済政策であれば国からの自治体へ委託する事務であると考えられることから法定受託事務と考えられますし、自治体が費用負担するのではなく一律に国が負担するにも関わらず法律が定められようとしない現状に対して「国が負担するためには、地方自治法で事業名が明記される必要がある」と仙谷議員は指摘し、地方財政法9条と10条を引き、法治国家である以上、定額給付金にかかわる事務を自治体に行わせる根拠となる法律を制定すべきではないかと主張しました。法律が制定されない限り、国の事業であるにもかかわらず、自治体が不服申し立てなどの義務負うことも指摘しました。
(この定額給付金事業に不満があって行政不服訴訟を起こせば被告は国ではなく堺市長になってしまいます)

「一体、法定受託事務なのか自治事務なのかどちらなのか」と問うたのです。これに対して、鳩山大臣や中川財務大臣は「国会の議決を経た予算自体が法令であり、補助金という解釈をしている」との答弁を行いました。しかし、補助金かどうかといえば、国庫負担金も地方交付税も補助金であり、仙谷議員が問うている法的にどちらといえるのかへの質問には全く答えておらずデタラメな答弁でした。地方行政の事務区分は行政法の初歩にも関わらずどちらとも答弁できない内閣に非常にあきれました。法定受託事務であれば、地方自治法第2条に定められたものに追加して新たに委託するには新しい法律が必要となります。また自治事務であれば、自治体毎に行う行わないは自由だということになります。こんなおかしなことはありません。
仙谷議員が言うように堂々と法律を制定するべきであり、姑息な手段で自治体を困らせるのは止めるべきです。

この2兆円があれば実際、何ができるでしょうか。
仙谷議員は、深刻化する"医療崩壊"を取り上げました。周産期医療充実、医師不足解消、がん対策拡充、新型インフルエンザ対策−。総額1兆9000億円の党独自の医療拡充策を説明し、「2兆円はばらまくのではなく、人づくりに使うべきだ。民主党が政権を取れば医療に優先的に使う」としました。本当に政策ではなくばらまきでしかない定額給付金事業よりもぜひ医療につかってほしいと思います。

そのほかにも、読売新聞の記事によれば、年収200万円の雇用を100万人(1年間)確保できるし、もしくは、全国の公立小中学校約3万2500校の運動場をすべて芝生にし、屋根に太陽光パネルを設置しても1兆6700億円ですむし、2010年完成予定の国際宇宙ステーションの日本の出費は6000億円。2兆円あれば日本が宇宙開発のトップに躍り出られるそうです。他にも、約1600億円あれば、保育園不足で入園待ちしている待機児童 (約2万人) の為に、保育園建設と保育士を確保出来るそうです。政策を学び政策に関わるものの端くれとして、こんな政策は信じられません。税金を集めて税金をそのまま返す(しかも別途大きな経費がかかる)。こんなのは政策とは言えないと思います。税金をあつめてどこに重点的に投入するか配分するのかを考えるのが政策なのではないのでしょうか。不思議でなりません。

地方財政法9条
 地方公共団体の事務(地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十七の二第一項 及び第二百九十一条の二第二項 の規定に基づき、都道府県が条例の定めるところにより、市町村の処理することとした事務及び都道府県の加入しない同法第二百八十四条第一項 の広域連合(第二十八条第二項及び第三項において「広域連合」という。)の処理することとした事務を除く。)を行うために要する経費については、当該地方公共団体が全額これを負担する。ただし、次条から第十条の四までに規定する事務を行うために要する経費については、この限りでない

地方財政法10条
 地方公共団体が法令に基づいて実施しなければならない事務であつて、国と地方公共団体相互の利害に関係がある事務のうち、その円滑な運営を期するためには、なお、国が進んで経費を負担する必要がある次に掲げるものについては、国が、その経費の全部又は一部を負担する。
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